そうだ、誠一さんなら日本アビエーションの社内報も持っているはず。昼間に会った美形コーパイさんの記事の件を思い出して、なんとなく見てみたくなった。

 二階にはゲストルームやシアタールームの他に書斎があり、誠一さんは時々そこで仕事をしている。社内報を保管してあるならおそらくそこだろう。

 目星をつけ、誰もいないのに「お邪魔します……」と呟いてドアを開けた。掃除をする時など勝手に入っていいと言われているけれど、いまだに遠慮がちになってしまう。

 予想通り、社内報はすぐに見つかった。今月のものだからだろうか、まだしまわずにデスクの上に置かれている。青空と飛行機がカッコいい表紙の、薄い機内誌のようなそれを手に取り、パラパラとめくってみた。

「新米スタッフの紹介……。あ、あった」

 CAやグランドスタッフを始め、整備士、マーシャラーなど、ひとり立ちした方々をピックアップしているらしい。その中に、ひと際目を引く副操縦士の彼女の姿があった。

 名前は(きさき) 千尋(ちひろ)さん。二十七歳で、東京都出身。日本アビエーションの女性パイロットの中では、最年少で副操縦士になったそう。

 将来有望だなと感服しながら、記事を読み進める。