「彼は浮気とか不倫とか、そんな浅はかなことする人じゃないですよ、たぶん」
「不倫までいかなくても、なんとなく嫌だなとか、不安になったりしないの? ステイ先ではお互いホテルに泊まるわけだし、人の旦那に手ぇ出したらタダじゃおかねーぞ、てめぇ!ってなったりしない?」
「そこまではさすがに」

 急に口が悪くなる郁代さんに苦笑いしつつ否定した。誠一さんがモテるとはいえ、皆仕事でホテルに泊まるのだし疑ったら失礼だよね。

 ──と、この時は思っていた。

 ところがランチをした後も、マンションに帰ってきてからも、なぜか郁代さんの言葉が引っかかってすっきりしない。今もCAさんたちと食事しているのかなとか、誠一さんのそばにずっと女性がいるのを想像すると少々胸がもやっとする。

 私たちの間には愛があるわけじゃないから、どこで誰となにをしようと自由なのかもしれない。契約婚って、こういうのもはっきり決めておいたほうがいいんだろうか。決して彼を信じていないわけではないのだけれど。

 吹き抜けになっており開放感がありすぎる広いリビングダイニングで、ひとりきりでいると余計にやきもきしてしまう。一度気にしだすとずっと考えちゃうな……。

 夕食を用意する前にソファに座ってぼんやりしていた時、テーブルに置かれたままの新聞が目に入った。