中性的だからもしかして、と思ってはいたけれど、女性だと知るとやっぱり驚く。女性パイロットも増えてきているとはいえ、圧倒的に男性のほうが多いし実際に見たのも初めてだから。

「パッと見、性別がわからなかったんです。ボーイッシュだけど可愛い顔立ちだったから。いや、でも〝カッコいい〟が勝ってるかな」
「ね~、女性ファンが多そうだよね。なんつーかこう、歌劇団で男役とかやってそうな感じで」

 郁代さんの言葉に激しく同意する。彼女が男役をやったらトップスターになれそうだ。私にはカッコいい要素なんて一ミリもないし、同じ女性として憧れる。

 ひと目見ただけの彼女に脳内で王子様の格好をさせつつ、 私たちはやっとカフェに向かって歩き始めた。彼女はマロン色の長い髪を耳にかけ、「それにしても芽衣子ちゃん」と話を変える。

「コーパイの女の子に、美人揃いのCA。旦那様の周りに常に女性がいるってなると気にならない? 親しくしてないかなぁって」

 いきなりの質問にキョトンとする私。それはつまり、不倫の心配をしているかということだろうか。

 そういえばあまり考えたことはなかった。あの誠一さんが不純な行いをするとは思えないし、そもそも他の女性と遊んでいたいなら私と結婚なんてしないだろうし。