「家事全般はお任せください。誠一さんが仕事に全力投球できるように、できる限りのサポートをします。彼が帰ってきてほっとするような居場所を作ることが、私の役目だと思っています」

　笑みを絶やさずにそう答えたものの、内心冷や汗が流れた。そんなのは妻として当前だろうか。いや、使用人がいる家柄なのだから、彼らに任せれば済む話だと言われてしまうかも……。

　食べ終えた食器をお手伝いさんが下げるのを少し目で追うと、どこか嬉しそうに頬を緩める誠一さんも視界に入った。しかし、お母様は感情が読み取れない無表情で口を開く。

「まるで面接ね」
「う……。す、すみません、これくらいしか思いつかなくて」
「十分じゃない」

　呆れられたかと思った次の瞬間、彼女の口から出た意外なひと言に、私は拍子抜けして目をしばたたかせた。

　お母様はおもむろに手を伸ばし、切り分けられたローストビーフをお父様のお皿に取り分けながら言う。

「妻が家庭を支える。そういう時代じゃないんでしょうけど、私は大事だと思うわ。物事を成功させる人には、支えてくれるよきパートナーが必要だから」

　そう言ったところで、お母様は初めてまともに笑ってくれた。その嫌みのない笑みと、私の気持ちを肯定してくれたことに驚く。