羽澄さんは毎回、私が気にする問題をいとも簡単にクリアして、説得力のある言葉をくれる。彼についていけば未来は素敵なものになるんじゃないかと、期待してしまうほど。

 迷う心をさらに動かそうとするかのごとく、彼は私の顔を覗き込んでくる。

「芽衣子さんにとっても、結婚は悪い話ではないんじゃないか?」
「た、確かに魅力的ですけど……まだお互いのことよく知らないですし」
「今日、結構さらけ出したと思うが」

 さらりと返され、うぐ、と声を詰まらせる私。

 言われてみれば、羽澄さんの事情もすべて聞いてしまったし、私はそもそも隠すことはなにもない。最初からすでに泣き顔も見られているしな……と、初対面で醜態をさらしたことを思い出して苦笑を漏らした。

「知らない部分があるとすれば、お互いの体温くらいか」
「たっ……!?」

 ドキッとするような発言をした彼は、私になぜか手を差し出してくる。

「とりあえず手、繋ぐ?」

 余裕の微笑みを向けられ、頬にじわじわと熱が集まった。なんだろう、この拒めなくさせられるような色気は。