「覚悟はしていても、俺はそんなにできた人間じゃないからなかなか決断できずにいた。だが、しばらくはぐらかしていたら『パイロットを辞めないなら、その代わりに政略結婚してくれないか』と言われるようになってね。強引に見合いの席をセッティングされたりして困っていたんだ」

 社長にならないなら、せめて政略結婚をして会社を助けてほしいということか。羽澄さんにとってはどちらにしろ気が重くなりそうだが、一応納得はした。

「社長になるか、政略結婚するか、どちらかを選べということですね」
「そう……そのはずだったんだが、いつの間にか政略結婚がマストのような状態になっていて。どうしても一緒になりたい相手を見つけでもしない限り、いつまでも結婚話を出されそうでうんざりしてる」

 そこまで聞いてピンと来た。面倒な結婚話から逃れるために、いっそ自分が選んだ相手と結婚してしまえと考えたんじゃないかと。

「だから、私と?」
「ああ。愛せそうもない女性より、俺は君がいい」

 魔力でもあるのではないかと思うほど魅惑的な瞳を向けられ、どきりとしてつい目を逸らしてしまう。