「東京にもこんなに綺麗な遊歩道があったなんて。なんだかスタンレーパークみたいで、式場に向かって走ったのを思い出します」
「言われてみれば、確かに風景がちょっと似てるな」

 羽澄さんも穏やかな表情で景色を眺めながら頷いた。心地いい潮風を感じながら、妹がいる街を思い返してなにげなく言う。

「結婚式からもう何日も経ったような気がします。羽澄さんと会ってから、よっぽど刺激的なんでしょうね」

 彼といると、自分の世界が開ける感じがする。私自身も知らなかった自分を見つけさせてくれるような、これからなにが起こるのか楽しみになるような、わくわくして新鮮な気持ちになるのだ。

 生活環境もスペックもなにもかも違う人なのに、話していてストレスがないし、まったく違うからこそ惹きつけられる部分もたくさんある。こんな人に出会ったのは初めてだから衝撃的だったのだろう。

 ふと視線を感じて振り向くと、夜の明かりを取り込んだ彼の瞳がこちらに向けられている。

「芽衣子さんは、結婚願望はあるのか?」

 突拍子もない質問を不思議に思いつつも、彼もディランさんの結婚式を思い出してなんとなく聞いてみたのかなと、深く考えずに答える。