長らく土地開発もされていない場所なので昭和感満載な街だが、閑散としている分平和なものだ。むしろ飲食店も格安なところがたくさんあるし、事情を解り合える人が多いので居心地は悪くない。

 にこっと笑って答えたものの、羽澄さんはなぜかため息交じりに頭を抱えてしまう。

「羽澄さん?」
「君たちのような姉妹が、何事もなく暮らせていたのが不思議だ……」

 そう呟いてしばし考え込んでしまうので、私はどうしたんだろうかと首をかしげる。十数秒後、彼はどこか真面目な表情になって私を見つめ、「食事が済んだら少し散歩していかないか」と誘った。

 まだ一緒にいられるらしい。いつまで奇跡が続くんだろうと思いつつも胸が弾み、私は快く頷いた。

 とても美味な和食をいただいて満足した後、運河沿いのボードウォークをゆっくりと歩く。ライトアップされた橋や水門が水面に反射してうっとりするほど美しく、わずかだが桜も咲いている。とても素敵な場所なのに、わりと人が少ないので穴場なのだろう。

 いつの間にか緊張も解れていて、潮風を感じながら自然体でたわいない話をする。