懐かしむような目をして語る彼が、とても眩しい。がむしゃらになれるほど、私には好きなこともやりたいこともない。強い意志を持って行動してきた羽澄さんに、憧れと尊敬が交ざったような気持ちを抱いた。

 航空大学を卒業してからもエリート街道まっしぐらなのは明白だが、一体いつ機長に昇格したのだろう。

「羽澄さんはディランさんと同じ三十三歳ですよね。機長になったのは何歳の時なんですか?」
「三十一。当時は日本アビエーションの子会社にいて、そこは研修期間が短いから他社より早く機長になれたんだ」
「す、すごすぎます……!」

 羽澄さんはなんてことないというふうに答えるが、こちらは開いた口が塞がらない。そんな若さで機長に上り詰めたなんて、受験だけじゃなく昇格試験などもきっと一発で合格してきたのだろう。

 驚きを隠せない私に対し、彼は口角を上げつつもふいにまつ毛を伏せる。

「早くひとり立ちしたかったんだよ。こうやって好きにやっていられるのも時間の問題だろうから」

 そう呟いた彼の表情に、どこか陰が落ちたように感じる。時間の問題というのはどういうことだろうと気になったものの、ちょうど料理が運ばれてきたので詳しく聞くことはできなかった。