「はい。恵茉っていいます」
「恵茉……めちゃくちゃ可愛いな。芽衣子によく似てる」
「私は誠一さんに似てるって思いましたよ」

 彼は感動を露わにして頬を緩め、愛娘の頬に軽く触れる。キョトンとしている彼女に私が「パパだよ」と教えると、意味はわからないだろうが澄んだ瞳でじっと誠一さんを見つめていた。

「よろしく、恵茉。これからはずっと一緒にいような」

 私と娘を抱きながらそう言われ、もう離れはしないのだと実感して幸せで満たされる。

 こんなふうに三人でいられる日が来るなんて。涙腺は緩みっぱなしで、また浮かんでくる涙を瞬きで散らした。

 すると恵茉が、なにかを思い出したように「あっち、あっち!」と部屋のほうを指差し、誠一さんと顔を見合わせた。下ろしてあげるとリビングへ意気揚々と向かっていくので、私たちも後に続く。

 恵茉は再び人参のおもちゃを切ってお皿に乗せ、落とさないようこちらに持ってきて誠一さんに差し出す。

「にんにん。どーじょ」
「くれるのか? ありがとう。くっ、可愛すぎ……」

 しゃがんでお皿を受け取った彼は、悶えたい衝動を堪えるように顔をくしゃっとさせていた。こんなに歓喜する彼を見るのは初めてで、私も嬉しくなって笑いがこぼれた。