「……ほんとはずっと、ずっと会いたかった……っ」

 泣きながら押し殺していた本音を口にすると、誠一さんは優しく笑って「知ってる」と言った。もう心の声を抑えるのは無理だ。

「他の人のところには行かないで」
「行くわけない。俺の心も身体も、全部芽衣子のものだよ」

 耳元に響くもったいないほどの甘い言葉で、不安は払拭されて心がどんどん満たされていく。

 どうして忘れていたんだろう。自分自身の幸せをもっと大事にしなければいけないことを。誠一さんと、恵茉が幸せならそれでいいという気持ちは変わらないけれど、もう自分の想いを犠牲にするのはやめよう。

 恋しかったぬくもりを貪るように抱きしめ合っていると、「まぁま……?」と不思議そうな声が聞こえてきてはっとする。いけない、誠一さんは子供の存在を知らないんだった。

 慌てて涙を拭い、しゃがんでリビングの戸口に立っている恵茉に「おいで」と両手を広げた。トコトコと拙い歩き方でやってきた彼女を抱き上げ、どんな反応をするだろうとドキドキしつつ彼に向き直る。

「あの、誠一さん、この子は……」
「俺たちの子、なんだよな」

 神秘的なものを見るような目で娘を見つめる彼は、すでに存在を知っていた様子だ。梨衣子が伝えていたのかもしれない。