私たちが暮らすアパートは、商店街から徒歩十五分ほどの場所にある。やや古さを感じるものの、以前住んでいたアパートに比べたら断然綺麗で、セキュリティーもある程度保たれているところだ。

 離婚した当時は安いビジネスホテルに数日泊まり、早急に物件を決めようとしていたのだが、輝さんが現れたことと妊娠の発覚で状況は一変。もっと子育てしやすい環境にしたほうがいいだろうと、住む場所も職場も改めて考え直した。

 つわりが始まったのもあり、清掃員の仕事は思いきって辞めた。子供が生まれたら不規則な勤務は難しいし、空港で働き続けると誠一さんや日本アビエーションの方々と会う機会が多く、精神的につらいというのも理由のひとつだ。

 そんな私に、輝さんがお好み焼き屋を手伝わないかと誘ってくれて今に至る。比較的治安もよく、自然も多くて子育てするにはよさそうだと感じたため、住む場所もその近くに決めた。

 出産前後は梨衣子が帰国してくれて 、しばらく一緒に生活していた。この頃はやっぱり初めてのことばかりで不安だったから、彼女がいてくれて本当に助かったしありがたかった。

 この道を選んだ私を決して否定せず支えてくれた梨衣子は、やっぱり最高の理解者だ。