「梨衣子がいなくなったら、私はなんのために生きていけばいいのか……。もう自分が必要とされなくなりそうで怖い。そうやって、自分のことばかり考えているのが嫌になります」

 誰にも言えなかった本心を吐露し、鮮やかすぎる緑に視線を落とした。どうしようもない寂しさと相まって純粋に喜んであげられていない自分に辟易し、鼻の奥がツンとしてくる。

 ダメだ。こういう時こそ笑顔でいないと、気分が落ちるだけ。込み上げるものを堪え、表情を明るくして顔を上げる。

「……すみません、今のは内緒にしておいてください! あの子の前では、無条件に頼れる姉でいたいんです」

 黙って耳を傾けてくれていた羽澄さんは、ふっと口元を緩めて「もちろん言わないよ」と頷いた。そして、穏やかな声で続ける。

「俺は、芽衣子さんが抱いている感情はごく普通のものだと思う。ずっとふたりで生きてきたのなら余計に、人一倍寂しくなるのも嫉妬するのも当然だし、なにも悪いことじゃない」

「そう、ですかね。でも……」

「君は自分よりも梨衣子さんのことを優先してきたんだろう。今悩んでいるのも、自分を優先してはいけないって心のどこかで感じているからなんじゃないか?」