即座に否定してくれたので内心ほっとした。距離の近い言動には少々物申したいが、妃も「輝さん、この歳で妹ができた!ってすごく喜んでましたもんね」と言っているし、彼にとっては家族に対するスキンシップで他意はないのだろう。

 輝明さんは華麗にお好み焼きをひっくり返した後、再び腰を下ろして思いを巡らせながら言う。

「なんかこう、罪悪感みたいなのもあったかな。芽衣子たちは苦労してんのに、俺は正式な家族でそれなりに平和に暮らしてたから。今からでも兄貴らしいことしてやりてぇなと思って。最初はだいぶ警戒されてたけど、俺に悪意はないってわかったらだんだん頼ってくれるようになりましたね」

 彼の気持ちもわからなくないし、本当に妹として大事に思っているようなので、芽衣子が心を許しているのも納得した。

 彼女がひとりで子育てもしながら元気にやれているのは、きっと輝明さんの支えがあってこそなのだろう。悔しさは消えないし、俺が言えた立場ではないかもしれないが、素直に感謝したい。

「俺が言うのはおかしいかもしれませんが、ありがとうございます。芽衣子たちを助けてくださって」

 しっかりと頭を下げると、彼は一瞬キョトンとした。そして〝調子が狂う〟とでも言いたげに、頭をぽりぽりと掻いて言葉を返す。