「あなたがいない間、俺は芽衣子を支えてやろうって勝手に心に決めたんです。あいつは遠慮してたけど、普通に考えて大変じゃないですか。離婚してから身ごもってるのがわかって、ひとりで育てていかなきゃいけないなんて。だから時々飯を奢ってやったり、子連れで働けるようにしたり、手助けしてるんですよ」

 手際よく鉄板にタネが流され、ジュウジュウといい音を奏でた。俺の心も、嫉妬やら悔しさやらで焼け焦げていきそうな気がする。

 どうして輝明さんがそこまでするのか、最大の疑問を投げかけようとする寸前、彼は俺の気持ちをわかりきった様子で言う。

「なんでそこまで?って思うでしょ。当然なんですよ。家族だから」
「家族?」

 意味がわからず眉根を寄せると、彼はボウルやスプーンを置き、太ももに両手を乗せて姿勢を正す。

「自己紹介してなかったですね。俺は店主の、益子輝明です」

 フルネームを名乗られ、俺は目を見開いた。

「益子……って、まさか」
「そう。あのクズ親父、益子の実の息子です。まあ、成人して家出てから絶縁状態だったし、母も数年前に離婚してるんで、血の繋がり以外はもうなんの関わりもないけど」