「それが恋ってものなんじゃん? 誰だって綺麗なままではいられないでしょ。嫉妬もするし、間違えもする」

 初めて共感できる発言をした彼は、妃の隣の席に腰を下ろし、俺に挑発的な笑みを向けてくる。

「羽澄さん、でしたっけ。あなたも今そんな感じなんじゃ? 芽衣子を手放したこと後悔して、俺に嫉妬してこの鉄板くらいジリジリしちゃってるでしょ。ねぇ?」
「そうですね。なので丸焼きにしていいですか」

 口元にだけ笑みを浮かべて棒読みで返した。いい性格してるな、この人……。

 無邪気に笑っている彼に辟易するも、ふと直前の会話を頭の中で反芻してはっとする。俺が誰なのかを知らなければ、今の言葉は出てこないはず。

「知っていたんですか? 俺と芽衣子の関係を」
「タネ作りながら、そういえば羽澄って〜って思い出しましたよ。日本アビエーションの社長兼、芽衣子の元旦那様」

〝元〟の部分を強調された気がしたが、ひとまずスルーしておこう。

 輝明さんは焼くところまでやってくれるらしく、キャベツがたくさん入ったタネを混ぜながら話し出す。