輝明さんが店主だったのか。気さくで明るいし、それを好んで通う客も多いのだろう。今みたいにキレるのも、もしかしたら名物になっているかもしれない。

 とりあえずテーブル席に向き合って座り、お好み焼きのタネは輝明さんに任せて妃が話を切り出す。

「実は、芽衣子さんから聞いてました。一年間の契約婚だったことも、彼女が別れを切り出して、ずっと連絡を取っていないことも」
「やっぱりそうだったのか。よく周りに言わなかったな。俺が本当は離婚してるって」
「言ったら羽澄さんが困るでしょう。公表しないのには理由があるんだろうと思ったし、噂が大きくなると大変じゃないですか」

 それはおそらく二年前のことを言っているのだろう。妃がむやみやたらに話す人じゃなくてよかった。

「助かるよ。でも、そもそもどうやって芽衣子と会ったんだ?」
「半年くらい前に、たまたまここで会ってびっくりしたんですよ。その時は彼女もお客さんとして来てたんですけど、今年に入ってから働き始めたみたいです」

 ということは、客として来た頃から輝明さんと親しくなっていて、産後一年ほど経って仕事を探していた時に声をかけてもらったとか、そんなところだろうか。