「羽澄と申します。失礼ですが、芽衣子さんとはどのようなご関係で?」

 焦燥を抑えきれず単刀直入に問い質すと、彼は瞬時に表情を変え、険しい目つきで睨みつけてくる。

「あんたもしや、芽衣子のこと狙ってる? ここに来たのもあいつが目的か?」

 突如、威嚇する獣のような形相に変貌した男に、妃はギョッとしつつ口の端を引きつらせて宥めようとする。

「いや輝さん、私が誘って……」
「そうです。芽衣子に会いに来ました」

 彼女を呼び捨てしているのにもいら立ち、どうしてもケンカ腰になってしまう。平然と答える俺に、彼は憤りをまったく隠そうとしない。

「なぁにぃ~!? あいつ見たさじゃなくて、俺のお好み焼きを食うために来いっつーんだよ! ったく……あんたには俺のオススメしか食わせねぇからな」

 どうやら俺が不純な気持ちでここに来たことが気に食わないらしい。昭和の頑固親父のごとく感情をぶちまけて奥に下がっていった。

 妃は彼の人となりをよく知っているのか、やれやれといった調子で苦笑する。

「よく潰れないなぁ、この店……」
「なんか無駄に熱い人だな。輝さん、といったか」
「ここの店主の輝明(てるあき)さんです。よくも悪くも熱血な人なんですけど、基本お調子者なので楽しいですよ。数年前に彼がお店を出してから、実家に帰るとついここに寄っちゃいます」