図星を指され、心が揺らぐ。一気に入ってきた彼女の情報が多すぎて頭が追いつかないのは確かで、一旦整理してから彼女のもとへ向かいたい気もする。

 芽衣子が去っていったほうを見やると、もう姿は見えない。住所も聞いていることだし、焦らなくても逃げられはしないはず。

 少しだけ思案し、妃に向き直って「わかった」と頷いた。

 お好み焼き屋へ足を向ける彼女に続いて中へ入ると、まだ夕飯には時間が早いせいか客はいない。食欲をそそるソースの香りが鼻をかすめた直後、先ほどの男が奥から陽気に出てきた。

「らっしゃーい! おっ、千尋ちゃんじゃーん」
「こんにちは。ふたり、いいですか?」

 常連客なのだろう妃を見てぱっと表情を明るくした彼は、俺に目線を移してぽかんとする。

「イケメンがイケメン連れてきた……。千尋ちゃんの彼氏?」
「違います、先輩ですよ。あ、今も先輩って言っていいのかわからないけど」

 ためらう彼女に「いいんだよ」と笑いかけていると、彼は顎に手を当てて俺をじっくり見てくる。

「ん? お兄さんどっかで見たような……」

 もしかしたらニュースなどで俺の顔は知っているかもしれない。間近で見るとなかなか凛々しく整った顔立ちをしている彼に、とりあえず名乗る。