あの男との子供である可能性もなくはないが、俺と別れてすぐにそういう関係にならなければ無理だろうし、芽衣子がそんな軽はずみな行動をするとは思えない。

 だが、彼女があいつを子供共々慕っているだけで、他の男が彼女に触れるだけで、胸が焼け焦げそうなほど痛くなる。その権利を奪いたい。芽衣子と子供ごと。

 たくさんの感情が一気に押し寄せて胸を掻きむしりたくなりながら、とにかく彼女と話すべく追いかけようとした時。

「羽澄さん!?」

 すぐそばから呼ぶ声が聞こえ、振り向いて目を丸くした。俺と同様に驚いた様子で顔を覗き込んでいたのは、意外にも妃だった。

「妃? なんでこんなところに」
「実家がこっちなんですよ。というか、羽澄さんこそなんで……」

 彼女は俺が行こうとしていた方向になにげなく目をやり、芽衣子の姿を捉えたのかはっとした様子を見せる。

「もしかして、芽衣子さんに会いに?」

 そう言うということは、妃は芽衣子がここで働いているのを知っていたらしい。つまり、俺たちの事情もバレていると考えるべきだろうし、今は取り繕う余裕もない。

「そうだ。俺がこれまでがむしゃらにやってきたのは、すべてこの時のためだからな」