ずっと、ずっと会いたかった。約二年ぶりにこの目で確かめた、愛しい彼女の姿に胸がいっぱいになる。

「芽衣──」

 しかし、ほぼ無意識に名前を呼ぼうとした瞬間、店内からやってきた小さな女の子が彼女の足にしがみついたので口をつぐんだ。とても可愛らしいその子を、芽衣子は愛しそうに抱き上げる。

「まーま」
「はいはい。今日は甘えんぼさんだね、恵茉(えま)。夕飯なににしよっか」

 恵茉というらしい女の子……今『ママ』って言ったか? まさか、彼女の……。

 通りを行き交う人に紛れてただ呆然とふたりの姿を見つめていると、店の中から「おーい、恵茉!」と呼びながら誰かが出てきた。頭にタオルを、腰にはエプロンを巻いた、店員らしき三十代くらいの男性だ。

 細身ではあるがしっかりした身体つきの彼は、愛嬌のある八重歯を覗かせてうさぎのぬいぐるみを女の子に手渡す。

「ほれ、忘れ物。これがないと寝られないんだろ」
「あー、すっかり忘れてた! ありがとう、(てる)さん」

 慣れた調子で女の子の頬を突っつく男に、気を許したような笑顔を向ける芽衣子。名前で呼んでいるし敬語でもないし、いったいどういう関係だ?と眉をひそめる。