「羽澄さん、食事会は出ていかれないんですか?」
「ちゃんと参加したかったんだが、勤務がどうなるかわからなかったから一応遠慮しておいたんだ。式だけでも見られてよかったよ」
「お忙しいんですね。梨衣子たちの友達の輪に入るのは気が引けるし、一緒に話せる日本人は羽澄さんくらいだったので寂しいです。海外旅行が初めてだから、ちょっと心細くて」

 ふたりの同僚の日本人も数人いるのだが、私はその中に入っていけるようなキャラではない。本音を吐露し、眉尻を下げて微笑むと、彼はなにか考えるような仕草をして口を開く。

「海外は初めてか。殻つきのロブスターの食べ方はわかる?」

 急にそんな質問をされ、私はキョトンとして首を横に振る。

「いえ、わかりません。ロブスターも、伊勢海老すらも食べたことないですし」
「この後の食事会で出るかもしれない。ここのレストランの名物だから」
「そうなんですか!? 梨衣子……昨日ずっと一緒にいたんだから教えておいてほしかった」
「妹さんと仲がいいんだな。俺はひとりっ子だから憧れるよ」

 ふっと自然な笑みをこぼす羽澄さん。完璧すぎて近づきがたそうな先入観があったけれど、意外にも気さくで話しやすいのでつい口が軽くなる。