数日後の金曜日、早く仕事を切り上げた俺は、その足で東京のはずれにある町田市へ向かった。芽衣子はここの商店街付近で働いているらしい。
アパートも近くだそうだが、いきなり家に押しかけるのはさすがに迷惑だろうと自重して、まず勤務先の飲食店にやってきたわけだ。
午後四時になろうとしている今、古風で趣のある商店街は適度に賑わっている。立ち飲み居酒屋や昔ながらのラーメン屋、沖縄料理から和洋菓子まで、様々な店が立ち並んでいて面白い。
以前の治安の悪い街とは全然違うが、懐かしい雰囲気の場所を好むのは彼女らしくて、なんだか口元が緩む。同時に、もうすぐ会えるかもしれないと思うと鼓動が速くなっていく。
彼女が働くお好み焼き屋は、商店街を抜けた先の通り沿いにある。木目の縦格子がついたモダンな外観のそれを見つけ、この時間まで働いていることが多いというので、休みでないことを祈っていざ向かう。
その時、中からカジュアルな服装のひとりの女性が出てきた。
一瞬で周りがぼやけて彼女だけにピントが合い、目を見張る。ひとつに縛っている髪は以前よりも伸びているが、透明感のある肌に明るい笑顔は変わっていない。