芽衣子と益子はパーティーで一度顔を合わせている。その時は、彼女が成長した自分の娘だったとは気づかなかったらしいが、今はとても複雑な心境だろう。

 認知だけして援助はしていなかったのだから、やはり誠実さには欠ける。そんな男でも父親は父親。芽衣子がいるのは彼のおかげであるのは事実なので、それについては感謝しておいた。

 今後も芽衣子に会わせるつもりはないが、益子にはとにかくすべてにおいて反省して罪を償ってほしい。

 そして、最重要事項である経営の回復に向けて、思いきった方法を試みた。関連会社や、維持費がかかる大型機材を売却したり、赤字の路線を撤退させたり。中でも最も効果的だったのは、社長になる前から進めていた社内改革だろう。

 主に重役の中ではびこっていた年功序列の風習を一切なくして、手厚すぎた役員報酬をカットし、年齢は関係なく仕事ができる人にそれ相応の立場と給料を与えるようにした。

 あぐらをかいていた古株の人間たちはあれこれ文句を口にしていたが、それらをすべて論破し『社を支える立場でありながら改革にご協力いただけないなら、役員でいる意味はありませんよね』と言うと、おとなしくなる者がほとんどだった。