──一年間の契約期間を終えた後、俺は虚無感を無理やり掻き消すように仕事に打ち込んだ。

 芽衣子がいないことで、家庭に割こうとしていた時間もすべて仕事に費やせた。きっとそれも彼女の思惑だったのだろう。朝から晩まで、休日すら頭の中を仕事でいっぱいにしていても、家に帰ってくるとどうしても彼女と過ごした日々を思い出していたが。

 社長に就任してからまず行ったのは、益子の不祥事の後始末。不正を働いた者には刑事責任、損害賠償責任を追及して被害回復を図り、再発防止策をきっちり策定した。

 ここまでの対応をスピーディーに行えたことで、俺や会社全体に対する周囲からの不信感も徐々に薄れていった。

 芽衣子への悪い噂も、やはり時間が経てば自然に消えていく。半年ほど経つ頃には誰も話題にしなくなっていた。

 だが、芽衣子を傷つけたという憤りはなくならない。憶測でネット記事を書いたフリーライターは、弁護士を通じて然るべき措置を取り、謝罪させた。芽衣子本人に謝ってほしかったが、間に合わなかったのが悔やまれる。

 益子本人とも面会をして、会社はもちろん、芽衣子にも多大な迷惑をかけたことについて追及した。許せはしないが、逮捕されるまでに至って本人もさすがに後悔しているのは見て取れた。