それから記念日までの間、なんとか気持ちを変えられないものかと話し合いを続けたが、芽衣子の意思は揺らがない。それどころか、すでに部屋探しや荷物の整理まで進めていたので、さすがに俺も参ってしまった。

 別れ話をした時、彼女が俺のために嘘をついたのはおそらく間違いないが、別れたがっているのは本心だろう。それなのに縛りつけておくのは、彼女を苦しめるだけだろうか。

 俺のそばにいることで、よからぬ噂をされて傷つけてしまっているのも事実。離れることで芽衣子の心の平穏が保たれるなら、そうしてやるべきなのかもしれない。

 だとしても、もう二度と現れやしないと言いきれるほど愛している人を、簡単に手放せるわけがない。契約が終了する前日の夜になっても、まるで駄々っ子のように離婚を受け入れられずにいた。

 ふたりで過ごす最後の夜かもしれないのに、俺たちはよそよそしく接することしかできず、芽衣子は先に寝室に入っていった。俺はひとりリビングのソファに座り、片側だけサインされた離婚届を眺めて彼女に思いを馳せる。