芽衣子と初めて会った時、説明のつかない懐かしさのようなものを漠然と感じた。
あの感覚がなんなのかはわからないが、とにかく彼女はすんなりと俺の心に入ってきて、必然のごとく愛しい存在になった。
ずっと一緒にいたい。どんな苦難もふたりなら乗り越えられる。そんな綺麗事ばかりの歌詞が並ぶラブソングも、本気で信じられるようになっていたのに──。
可愛い妻をめいっぱい愛して、幸せな気怠さを抱きながらダイニングテーブルについた早朝。覚悟を決めたような面持ちの彼女から告げられたのは、想像もしていないひと言だった。
「私と、離婚してください」
頭をかち割られたような衝撃を受けた。理解が追いつかない。
昨夜、喉がカラカラになるまで愛の言葉を交わして抱き合ったばかりじゃないか。信じられなくて、呆然としたまま確認する。
「……寝ぼけてる?」
「ふっ。いえ、ばっちり目覚めてます」
「本気なのか?」
「本気だからこそ言えるんですよ」
俺とは違い芽衣子は落ち着いていて、口元に笑みすら浮かべている。しかし、それは当然ながら覇気がない。