──いつの間にか眠ってしまっていて、気がついたのは空が明るんできた夜明け頃。夕飯も食べずに限界まで抱き合って眠りこけてしまうなんて、付き合いたての恋人のようだ。
気持ちよさそうに眠っている誠一さんを見て口元をほころばせ、裸の肩に毛布をそっとかけてベッドから抜け出した。
作り途中だった料理を仕上げてダイニングテーブルに並べていると、誠一さんも階段から下りてきた。少々乱れた髪にまだ眠そうなとろんとした目をしながらも、「身体は大丈夫か?」と気遣ってくれる彼が愛しい。
日が昇ってきて、綺麗な朝焼けが窓の向こうに広がる。なんて爽やかで幸せな朝だろう。これから話そうとしている内容と、まったくもって不釣り合いだ。
いつものようにふたりで向かい合って椅子に座ると、私は軽く深呼吸し、意を決して「誠一さん」と声をかける。
「私と、離婚してください」
まっすぐ見つめる私の瞳に、大きく目を見開いた彼が映った。