彼はきっと、政治家の悪事を暴きたいだけなのだろう。けれど私は、これまでいないものと思っていた父親が急に存在感を持ち始めたせいか、なんだか嫌な予感がしてならない。今さら父が私に接触してくることなんてなさそうだけれど。

 胸を激しくざわめかせながらも、まず私たちの親子関係が本当なのかを調べることにした。

 もしかしたら清水さんの情報が間違っているかも……というかすかな望みを抱いて戸籍謄本を取得してみたが、結果は彼の言う通り。認知の欄に益子の名前があった。

 それを確認して、真っ先に頭に浮かんだのは梨衣子。彼女にも教えるべきだと思うが、なにもためにはならない気がするし日本にいるわけでもないから、急ぐ必要はないだろう。

 誠一さんに話すのも、私が益子の娘だと知ったらどう思われるか不安でためらってしまう。しばらく悩める日々を過ごしていたものの、それはあっという間に終わることになった。

 約一週間後の夜、お風呂に入ってまったりしようという時に、誠一さんが真剣な面持ちで切り出す。

「芽衣子、少し話をしてもいいか? 君にとってはあまり聞きたくない話かもしれないが、知らせておいたほうがいいと思うんだ」

 あまりよくない前置きをされ、ああ、誠一さんの耳にも入ってしまったのかとすぐに察する。ぐっと手を握って頷き、おとなしくソファに座った。