「それだけじゃ、私だとは限らないのでは……」
「疑うようでしたら、戸籍謄本を確認してみてください。益子は認知しているようなので、彼の名前が記載されているはずです。ちなみに、お母様の名前は柚谷蒔絵(まきえ)さん。生前は羽田空港近くのスーパーで働いていた。これは合っていますよね?」

 自信を持った口調で母のことまで詳細に語られ、疑心が徐々に変わっていく。きっとこの人が言っているのは確かなのだろう、と。

 でも、いきなりこんな話をされても気持ちがついていかないし、信じたくもない。動揺が大きくてなんの返事もできずにいると、清水さんがやや険しい表情で手すりに肘をかける。

「受け入れがたい気持ちはよくわかります。益子が賄賂を渡していたかはまだ疑惑の段階ですが、多額の金を横領した犯罪者なのは事実ですからね。それに、あなたのお母様を弄んだ男だ。許しがたいでしょう」

 不愉快そうに吐き捨てられ、私は眉をひそめた。

 清水さんの言う通り、益子は日本アビエーションに大きな損害を与えた。誠一さんにとっても決して許せはしない人物だろう。そんな人が私の父親だなんて……いくら血以外の繋がりがないとはいえ、とても申し訳ない気持ちになる。