「……どうしてそんなに優しいんですか? 誠一さんを喜ばせたかったのに、私のほうが嬉しくなっちゃうじゃないですか」

 制服の襟を片手できゅっと掴むと、彼はなぜか嬉々とした調子でクスクスと笑った。

「芽衣子……本当に可愛いな、君は」
「可愛くなんてないですよ。容姿は超平凡だし、昨日だってあんなワガママ言っちゃうし。困ったでしょう」

『誠一さんの隣は、私がいい』なんて言われても、業務なのだからどうしようもない。思い出すと自分の子供っぽさに呆れる。

 なんだかもうヤケになってぶつぶつぼやいていると、誠一さんは私を抱いたまま子供を宥めるように頭をぽんぽんと撫でる。

「今日隣にいたのは妃だったが、俺はずっと芽衣子のことを考えていた。困るどころか嬉しいよ。好きな子が嫉妬してくれてるのは」

 彼の口から出た言葉がいろいろと引っかかり、私はぴたりと一時停止した。

 フライト中も私のことを考えてくれていたなんて嬉しいけれど、あのワガママが嫉妬だって気づかれていたんだ。つまり、私の気持ちもバレているということ。

 どうしよう、ものすごく恥ずかしい。というかそれよりも、〝好きな子〟って……。