呆気に取られる私に、梨衣子は興味津々な様子で耳打ちしてくる。

「超絶イケメンだよね~。ディランの友人の羽澄(はすみ)誠一さん。学生時代にこっちに留学してて、同い年ってのもあってディランと仲よくなったんだって。仕事の合間にわざわざ来てくれたみたい」

 こちらで仕事をしているのか。どうりで英語もペラペラなわけだ。

「ハイスペなのは容姿だけじゃないんだよ。なんとあのハスミグループの御曹司だっていうんだから、驚きだよねぇ」
「おっ、御曹司!?」

 思わず叫びそうになるも、慌てて口元に手を当てなんとか声を抑えた。そんな単語をリアルに聞くことになるとは……!

 しかも、ハスミグループは国内最大手の航空会社やターミナルビルを運営し、日本を牛耳っている巨大グループ企業だ。この名前を知らない人はいないだろう。

 まさか、そんなに地位の高い方だったなんて! 同じ日本人なのに別世界の人という感じ。

 開いた口が塞がらない私をよそに、梨衣子は「まあ、ディランには敵わないけどー」と自慢げにのろける。どんな男性よりも旦那様が一番だと思えるなんて羨ましい。

 すると、その御曹司様がこちらに向き直るので、私たちは咄嗟に背筋を伸ばした。真正面から顔を合わせて微笑まれると、やはり彼の持つ魅力に圧倒される。