ずっと胸に秘めていた本音が自然にこぼれ、数秒間沈黙が流れた。

 私はすぐに失言に気づいたものの、時すでに遅し。もう引っ込められないので逃げるしかない。

『あっ……い、いえ、なんでも! 明日は大事な日ですから、ゆっくり休んでくださいね。おやすみなさい!』

 電話の向こうから、やや焦燥に駆られた声で《芽衣子》と呼び留めるのが聞こえたけれど、問答無用で通話を終了させた。

 それから今まで業務連絡のようなメッセージのやり取りしかしていない。誠一さん、絶対おかしいと思っているだろうな。なんであんなワガママみたいなことを口走ってしまったんだ……と、私はずっと後悔している。

 小さなため息を漏らして、窓の外の景色から足元のスペースに置いたケースへと目線を移す。中に入っているのは、さっき空港内の花屋に寄って買った花束だ。

 誠一さんがフライトを終えたら、お疲れ様の気持ちを込めて渡そうと思っている。昨日の今日で若干気まずいけれど、これでごまかせるかも、という思惑もほんのちょっとあったりする。

 羽田空港へは一時間半ほどで着く。最後のフライト、彼は今なにを思っているんだろう。