「リーゼロッテ! またあんたかい? 一体今度は何をやらかしたんだっ!?」

この村に住む女性に無償で割り当てられた木造家屋の1軒屋にやってくると、早速目の前の椅子に座るリーゼロッテに質問した。

「何よ、おばさん。うるさいわね〜。ちょっとこの村の若い男にちょっかいかけただけでしょう?」

リーゼロッテは大きく胸元が開いた、まるで寝間着のようなだらしないワンピース姿で長い髪をくるくる指でいじりながら視線も合わせずに生意気な態度で答える。

するとそれを聞いていたこの村の女性、メリーが喚いた。

「な、何言ってるのよ! 私の息子はまだ13歳なのよっ!? そ、それをひと気のない森の中に引きずり込んで、無、無理矢理服を脱がせようとしたでしょうっ!? 一体何するつもりだったのよ!」

「野暮な事言わないでよ。若い男と女が2人きりでする事と言ったら1つしかないでしょう? それともはっきり口にしてあげましょうか?」

リーゼロッテは悪びれもせずに言う。

「いやあああっ! け、汚らわしいっ! 私の息子を汚さないでよっ!!」

メリーは耳を押さえてしゃがみこんでしまった。

「待って、落ち着きなよ。メリー。未遂で済んだんだろう?」

私はメリーの肩に手を置き、なだめた。

「ええ、そうよ。あの子ったらズボンを脱がしただけで悲鳴を上げて逃げていくんだもの。臆病だわ」

「あんたねぇ! いい加減にしないか! この家にタダで住めるのも、ここが生活に困った女子供の為に作られた家だからなんだよ?それに条件として必ず労働することが義務付けられているじゃないか。畑仕事や織物の仕事……人手はいくらあっても足りないくらいなんだよ! 若い男ばかり追いかけていないで働きなっ! それが無理なら出てお行きっ!」

「あ〜全くほんとにうるさいおばさんね。いい? 私が誰か知ってるの? 私はねえ、貴族だったのよ! 元侯爵令嬢だったのだから!」

「ふん、それが何だって言うんだい? 私はね、本物の王子を痛めつけたこともあるし、王女さんにだって会ったことがあるのさ。ちなみにその王女さんは私にとっては娘みたいな存在さ。彼女は王女だって立場にも関わらず畑仕事や温泉工事にも携わってくれたのさ。あんたとは大違いな娘だったよ」

「ふん! 誰がそんな話信じるものですかっ!」

リーゼロッテは腕組みするとそっぽを向いた。すると再びメリーが喚いた。

「この色情女めっ! 今度うちの息子を誘惑しようものならこの村から追い出してやるからねっ! 二度と近づかないでおくれっ!」

メリーは吐き捨てるように言うと、飛び出して走り去っていく。

「あ〜全くうるさいおばさんね。それにしてもこの村に住む男の子たち、ちょっと平均年齢が若すぎね〜」

「当然じゃないか! この村ははね、男から逃げてきた母子連れが寄り添って暮らす村だからだよ! あんただけなんだよ?子 連れでもないのにこの村に住んでいるのは」

「それはおばさんが私をあの村から追い出したからでしょう?」

「元はと言えば、あんたが『アルト』の男達を誘惑したからじゃないか! 恋人がいようがいまいが、相手が妻帯者であってもお構い無しで誘惑してトラブルになったから追い出したんだろう? それなのに……今度はまだ成人年齢にも満たない子供にまで手を出して! 一体どういうことなんだい!?」

「あ〜うるさいうるさい! もう出てってよ! これから私は昼寝するんだから。早く出てけーっ!」

「あ、こ、こらっ!!」

リーゼロッテはこの私の背中をグイグイ押して家の外に押し出してしまった。全くなんて娘だ。この私にこんな真似をするなんて!

「いいかいっ! 明日からちゃ~んと働かないと、この村から叩き出すからねっ!」

それだけ言うと、むしゃくしゃする頭を抱えながら乗ってきた馬にひらりと飛び乗り、『アルト』の村へ帰っていった。

「全く、トラブルはゴメンだよ!」

しかし、翌日……さらなるトラブルが発生した――