「うう……気持ち悪いわ……」

朝、ベッドから起き上がると確実に私は二日酔いになっていた。頭もズキズキ痛む。流石に昨夜は飲みすぎてしまったようだ。

「レベッカ様……流石に私も悪酔いしてしまったようです。それもこれも水晶玉であんな不愉快な連中を目にしてしまったせいですわ」

同じくミラージュもベッドの上で青い顔をして天井を眺めている。ああ、天井がぐるぐる回って見える……。

その時。

――コンコン

扉がノックされる音と同時にサミュエル王子の声が聞こえてきた。

「レベッカ、ミラージュ。起きているかい? 朝食の時間だけど?」

「サミュエル王子……勝手に部屋に入ってきて下さい」

何とか声を振り絞る。

「失礼するよ……」

私の声が聞こえたのだろう。

――カチャリ

扉が開かれ、サミュエル王子が部屋の中に入ってきて驚きの声を上げた。

「うわあああっ!? 2人とも、どうしたんだいっ!?」

「ええ、見ての通りです……」

「二日酔いですわ……」

私とミラージュは仲良く天井を見つめながら返事をした。

「ええっ!?二日酔いだって!?」

「はい……なのでお願いがあるのですが……」

「な、何だい? レベッカ?」

「非常に頭が痛むのでお静かに願えますか?」

「え? あ、ああ。分かった、静かにするよ」

そしてサミュエル王子は小声で尋ねてきた。

「それで、2人とも。俺は君たちの為に何をしてあげればいい?」

「そうですね……二日酔いによく効く薬草か何かあれば欲しいところですが……」

「よし、分かった。二日酔いによく効く薬草だな? ミラージュはどうだい?」

「私もレベッカ様と同じものをお願いしますわ」

「よしきた! 待っていてくれよっ!? 絶対に何処にも行かないでくれよ、2人とも!」

サミュエル王子はそれだけ言い残すと、バタバタ走り去って行った。王子は何処にも行かないでくれよと言っていたけど、そもそも今の私達は二日酔いが酷すぎて出掛けられるような状態ではない。

するとすぐにドアが再びノックされた。

――コンコン

「は〜い……どちら様?」

今度はミラージュが返事をした。

「私です、占い師のナージャです。今よろしいですか?」

ナージャさん……? ひょっとして旅立ちの誘いに来たのだろうか?

「レベッカ様、どうしますか?」

ベッドからミラージュが尋ねてくる。

「そうねぇ……せっかくだから入って貰いましょう?」

「どうぞ〜……」

ミラージュが若干元気のない声で返事をする。

「失礼致します」

カチャリと扉を開けて、中へ入ってきたのは背中にリュックとテントを背負ったナージャさん。出掛ける気満々だ。

「まあああっ!? ど、どうされたのですかっ!? 2人とも!」

ナージャさんのキンキン声が二日酔いの頭に突き刺さる。特にミラージュはしかめっ面してその声に耐えていた。ドラゴンだから耳も良いのだ。

「見ての通り、二日酔いで寝込んでいます。今サミュエル王子が二日酔いによく効く薬草か何かを探しに行ってくれているんです。うぷっ!」

吐き気と戦いながら何とか答える。

「二日酔いに効く薬ですか!? それなら私にお任せ下さい!」

ナージャさんがドンと胸を叩いた。

「まぁ、お薬を持っていらっしゃるのですか?」

ミラージュが嬉しそうに言う。

「いいえ、占ってみるのです」

「「はい?」」

私とミラージュが同時に声を上げる。うん、やはり私とミラージュは息ぴったりだ。こんなときでも呼吸が合うのだから。

「お待ち下さいね、すぐに占ってみますから」

ナージャさんは言うと、ドスンと重そうなリュックを床に置く。

あの……その音、頭に響くのですけど。

ナージャさんは何やらリュックの中から紫色の布を広げると部屋に置かれたテーブルにバサッとかけ、水晶を置く台座と水晶を取り出すとテーブルの上にセッティングした。

「それでは今から占いを始めます……」

ナージャさんは水晶に手をかざすと占いを始めた――