「アトラントですか……一度行ってみたいですね。私の父親も恐らくあの浮かんでいる島に住んでいるのでしょうね? でもレベッカ様の御用が先で構いませんよ?」

ミラージュが私を見つめる。

「いいえ! 何を言ってるのミラージュ! 貴女にはいつもいつもお世話になってるのよ? 今回は是非、貴女のお父さんに会いに行きましょうよ!」

私はガシッとミラージュの両手を握りしめた。

「レベッカ様……本当によろしいのですか?」

ミラージュは目をうるっとさせなる。

「ええ、勿論よ。ミラージュ」

「そうですか。では次に貴女の占いをさせて下さいな」

ナージャさんは私を見た。

「はい、よろしくおねがいします」

「では占いますね……」

ナージャさんは再び水晶に手を当てた。すると眉をしかめる。

「……どうやら貴女は悪人たちに追われているようですね……?」

「「え??」」

私とミラージュは声を揃える。だって悪人に追われる心当たりなんて全く無いのに?

「今、映像がこの水晶に浮かんできますよ……」

ナージャが水晶に顔を近づけたので私とミラージュも顔を近づけた。すると水晶玉がモクモクと曇り始め、やがて何やら映像が浮かび上がってきた。

「レベッカーッ!! 可愛い私の娘! 今すぐ父さんが助けに行ってやるからなーっ!」

「え!? だ、誰っ!?」

映し出された人物はヒゲモジャで、髪はボッサボサの見知らぬ中年男性だった。身なりもまるで乞食のような姿をしている。知らない!こんな男性、私は知らない!

「ねえっ! ミラージュッ! この人誰かしら!?」

「さ、さあ……? 誰でしょう? しかしそれにしても随分ワイルドな男の人ですわね。汚らしい身なりで野性的ですわ」

「ミラージュにも心当たりが無いのね?」

「お待ち下さい。また別の映像が現れそうですよ?」

次に水晶玉の映像が切り替わり、私は驚いた。何と映し出されたのはお姉様達だったのだ!

「えええっ!? お、お姉様方!?」

3人の姉たちはオーランド王国にいた時とは比べものにならないくらい、みすぼらしい姿をしていた。そして、一番上のジョセフィーヌ姉様がドアップで映し出された。

「レベッカッ! 待ってなさいよ! 必ず貴女を見つけて一生太陽を見ることが出来ないように監禁してやるから!!」

「「「ええええっ!?」」」

私もミラージュも、何故かナージャさんまで驚きの声をあげる。水晶玉に映るお姉様の目は復讐で燃えている。一体何故っ!? 私は監禁までされる程に恨まれる覚えは全く無い。でもここに映っているのがお姉様たちということは……。

「ねえ……ミラージュ」

「はい、レベッカ様」

「さっきのワイルドな男の人……まさか……」

「ええ、そのまさかですわね」

「アレって……私のお父様……?」

ミラージュは黙って頷く。

「ええええっ!? うっそー!!」

信じられない! あ、あんなに身だしなみに人一倍気を使っていたお父様が、あんなヒゲモジャおやじになっているなんて!

「でも不思議だわ。お父様は私を助けようとしているし、かたやお姉様は私を監禁しようとしいる……」

「あ! また別の映像に切り替わりますよ!」

ナージャさんがどこか嬉しそうだ。そして再び私達は水晶玉に注目し……目を疑った。
次に映し出されたのは何とあのアレックス王子だった。アレックス王子は叫んでいた。

「レベッカッ! ランスや父には渡すものかっ! お前は俺の妻なのだからな! 必ず見つけてみせるからなーっ!」

「いや! レベッカは僕がもらうよ!」

ランス王子が不意に水晶玉に現れた。

「いいや! 私が娶る!」

変態国王が映し出され……映像はそこで終わった――