ノマード王国の東に存在する広大な砂漠――

その砂漠の中についに私達はオアシスを見つけた。

「あ! 見えました! あそこが『占いの町』ですね!?」

ミラージュがシュバッと砂漠の先を指差した。

「え? 何処に町があるんだい? 俺には何も見えないけどな?」

サミュエル王子は眩しいのか、手をかざしながらミラージュの指差した先を見る。

「あら、サミュエル王子には見えませんの?」

ミラージュは不思議そうに尋ねる。

「あ、ああ……視力の良さには自信があったのにな……」

「サミュエル王子、見えなくて当然ですよ。だってミラージュはドラゴンですよ? 数キロ先の景色が見えて当然ですから。あ、ちなみに私だって見えませんよ。砂漠しか見えません」

「そ、そうか……なら良かった」

サミュエル王子は私の話に安堵したかのように胸をなでおろした。

「でもミラージュが見えたって事は目的地が近くなったって事ね。良かったわ〜。だってラクダがこんなにも乗り心地が悪いなんて思わなかったんだもの」

「ええ、たしかにそうですね。まさかラクダで乗り物酔いするとは思いませんでしたわ。それにしてもラクダって、こんなに上下左右に揺れるなんて。あのクソ王子の元へ向かった馬車よりも酷い乗り心地ですもの!」

ミラージュは私がグランダ王国へ嫁いできた時に城へ向かう為に乗った場所の乗り心地を思い出したようだった。

すると……。

「ベッ!!」

再びミラージュの乗ったロバが唾を吐いた。それは今までにない、最高に強烈な臭さだった。

「ウキャアアアッ!!」

ミラージュが悲鳴を上げる。そして運悪く唾が吐き落とされた至近距離にはラクダにまたがるサミュエル王子がいた。

「ウグウウウッ!! グ、グザイ…ッ!!」

サミュエル王子が鼻をつまむ。

「いやああっ! やめてええっ!」

私も鼻をマントで隠し、あまりの臭さに涙がにじむ。なんて強烈な臭さなんだろう? 思わず意識が遠のきそうになった。

ん? 意識が遠くなる……?

ハッ! そういえば、ミラージュはドラゴンだから私達よりもずっと鼻がきく。ミラージュは無事なのだろうかっ!?
慌ててミラージュを振り向き……。

「キャアアアアアーッ!」

思わず絶叫してしまった。何とミラージュは器用にラクダに乗ったまま気絶していたのだった――


****

 それから何やかんやとあったものの、私達は何とかオアシスにある『占いの町』に到着した。

カッポ
カッポ
カッポ
カッポ……

ラクダにまたがり、石畳で出来た美しい町並みを私達は歩いていた。

「うわあ……なんてきれいな町並みなのかしら……」

 町の中央にはまるで湖のような大きなオアシスがある。この町は砂漠の真ん中にある巨大なオアシスをぐるりと囲むように楕円形の大きな町になっている。
湖? の周囲には樹木や緑が生い茂り、路面は綺麗に石畳で舗装されている。建物は砂漠の砂嵐を防ぐためか、頑丈な石造りの建物が立ち並んでいる。
町の人々は全員私達と同じようにマントを羽織り、素足にサンダルを履いていた。

「何だかエキゾチックな雰囲気ですね」

ミラージュも初めて見るオアシスの町に興味深々だ。

「とりあえず、砂漠超えはとても疲れるから今日はここで1泊しないかい?」

前方を行くサミュエル王子が振り返ると尋ねてきた。

「そうですね、賛成です。でもまずは何処かで食事にしませんか?私 お腹が空いちゃって……」

するとミラージュとサミュエル王子が素早く私を見た。

「た、大変だ!」

「ええ、そうですわね!」

2人は互いに目配せしあおう。

私が首を傾げるとサミュエル王子が提案した。

「まずはすぐに食事の出来る場所を探しに行こう!」

「ですわね!」

その後……。

サミュエル王子とミラージュの連携プレイ? で私達は食事にありつく事が出来た――