「アマゾナさん! 無事だったんですねっ!?」

まあ、多分彼女は女傑だから無事だとは思ったけれども‥…‥おおっ!?
私はアマゾナを見て驚いてしまった。何故なら彼女の右手には弓状にカーブしたサーベルがしっかり握られていたからである。よく見ると洋服があちこち鋭い爪で引っかかれたように裂けていた。

「ど、ど、どうしたんですかっ!? その姿はっ!?」

驚いてアマゾナに駆け寄ると彼女の袖を握りしめた。

「ああ、ちょっと巨大モグラが子供を襲うとしていたからね、やっつけてやったのさ。何せ今日のバザーは私達の隣村の女性と子供達だけが暮らしている村人たちが大勢参加していたからね。彼女たちはこのバザーで布製品と野菜をメインに売りに来ていたんだよ。……ったく! それなのにあの忌々しい巨大モグラたちのせいで……でもいつの間にか1匹もいなくなっているようだけどね」

アマゾナは辺りをキョロキョロ見渡している。

「すみません……バザーが台無しになってしまったのは私達のせいかもしれません」

私はアマゾナに頭を下げた。

「ええ。そうですわね。これは私の失態です。本当に申し訳ございませんでした。」

ミラージュも私にならって頭を下げた。

「え? 何故2人が謝るんだい?」

アマゾナはキョトンとした顔で私達を見る。

「そうだよ。レベッカ、ミラージュ。あのモグラたちがこのバザーを襲ったのは君たちのせいじゃないだろう?」

サミュエル王子もそう言ってくれるが私は……いや、私とミラージュは少なくともそうは思えなかった。きっとあの巨大モグラたちは自分の手下たちのモグラをミラージュと私によって倒され、人間に復讐する為に土の中を潜ってこの村にやって来たのではないかと考えていた。

では何故そう思ったかというと実は私には動物たちの思念が少しだけ理解出来るからだ。そして半分ドラゴンであるミラージュも動物たちの言葉を理解する事が出来る。私とミラージュにはあのモグラたちがこの村を復讐のターゲットとして襲ってきたことが分ってしまったのだ。

「すみません。私達が畑のモグラ退治でボスたちを倒せなかったからです。何とお詫びしたらよいか…‥」

しかし、私の言葉にアマゾナは笑った。

「何言ってるんだい! 確かにバザーは酷い被害を受けてしまったけれども、怪我人すら出なかったんだよ? おまけに今日のバザーには町から新聞記者が来ていたのさ。彼らは今回の事を大々的にニュースで取り上げて募金活動の呼びかけもしてくれると約束してくれたんだよ。だからちょっとしたトラブルはあったけれどもバザーは大成功さ」

そして私の背中をバシバシ叩きながらさらに豪快に笑った。

「アマゾナさんっ!!」

私は嬉しくて彼女に飛びついた。こんな風に何でも前向きにとらえてくれる人は心がとっても温かい。こういう人の傍にいれば、私は自分の力がより強く発揮出来る。私の力は周囲の人々の感情によって大きく左右されるのだ。

「アマゾナさん。まずはこの滅茶苦茶になってしまったバザー会場を皆で元に戻しましょう!」

「ああ、そうだね。まだ売り物になりそうな品物は残っているし……よし! それじゃ皆で力を合わせてバザーを再開しようじゃないか!」

その場にいた人々が歓声を上げたのはいうまでも無かった。
それから1時間後、何とかバザーは再開されて大盛況で幕を閉じた。

そして日もとっぷり暮れた頃、ようやくサミュエル王子は温泉に入ることが出来たのだった――