振り向くと懐かしいアマゾナだった。彼女は頭にバンダナを巻き、長いワンピースにエプロンドレスをしている。

「アマゾナさん! 私、ついにやってきちゃいました!」

嬉しさのあまり荷台から飛び降りると、アマゾナが私をキャッチしてくれた。そしてそのまま高々と私を抱き上げクルクルと回り出した。

「アハハハ! よく来たねっ! あんたが来るのをずっと待っていたよっ!」

「私も早くここに来たかったです!」

2人で笑いあって回っていると、背後でサミュエル王子の悔しそうな声が聞こえてくる。

「ああっ! あのクルクル抱っこ、俺がやってみたかったのに……!」

「サミュエル王子、お望みなら私がクルクル抱っこをやってさしあげますわよ?」

「違うっ! やってもらいたいんじゃなくて、俺がやってみたいんだ!」

妙なネーミングを付けて、奇妙な会話をしているサミュエル王子とミラージュに気付いたのか、アマゾナが私をストンと地面に降ろした。

「おや? あんた達、初めて見る顔だね? でもあのクズ王子はいないようで何よりだ。初めまして、私はこの村の村長のアマゾナだよ」

そしてまずはサミュエル王子に手を伸ばす。するとアマゾナの手をがっしり掴むと言ったんだ。

「初めまして。俺はさすらいの旅人で、レベッカの将来の夫候補のサミュエルです」

大真面目に言うサミュエル王子に、もはや突っ込みどころもない。

「ああ。あんたはあの腑抜け王子とは目の輝きが違うね。うん、あんたなら信頼できそうだ」

そして次にミラージュを見た。

「初めまして、私はレベッカ様を慕い、一生をレベッカ様の下僕としてお仕えしようと心に決めたミラージュと申します」

そしてガシッとアマゾナの手を両手で握りしめる。

「おや……? あんた、なかなかやるね? 何だかただ物ではないオーラを感じるよ?」

アマゾナはミラージュを見てニヤリと笑う。

「それはどうも有難うございます。そういう貴女もなかなかのものですわね? この私の実力を一目で見抜くのですから」

「ああ、そうだよ。よし、では後でお互いの親睦を深める為に腕相撲でもやらないかい?」

「ええ! 望む処ですわっ!」

何やら奇妙な約束をしてしまったミラージュとアマゾナ。うん……でもやっぱり来て良かった。だってこんなにも簡単に3人は打ち解けあったのだから!

「よし、とりあえずは長旅で疲れただろう? 私の宿屋で食事にしようじゃないか? レベッカと愉快な仲間たちを歓迎するよ! さあ、ついておいで!」

そしてアマゾナはずんずん前を歩きだした。私達もその後をおとなしくついて歩く。するとミラージュが尋ねてきた。

「レベッカ様、私達って愉快な仲間たちに見えるのでしょうか?」

「う~ん……仲良さ気に見えたからじゃないかしら? ほら、私達は3人とも仲良しだから」

「ええ、そうですわね!」

納得したようにミラージュは頷く。すると突然サミュエル王子。

「ねえ、レベッカ。お願いがあるんだけど?」

「何ですか?」

「後で俺にもクルクル抱っこをさせて貰えないだろうか?」

「……」

真剣な目でじっと私を見つめるサミュエル王子。断ることは……到底出来そうに無かった――


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「さあ、好きなだけ食べな!」

宿屋の食堂に到着した私達の前には山ほどの料理が並べられた。鶏の丸焼きから、豚の丸焼き、魚の姿焼き……焼き物料理尽くしだった。しかし、肝心なアレが無い。

「……無いな」

「ええ、ありませんわね」

ミラージュに引き続き、サミュエル王子も言う。そこで私が彼らを代表して、アマゾナに尋ねた。

「あの……アマゾナさん。肝心なお野菜が何も無いみたいなんだけど……?」

「ああ……あんた達にもバレてしまったかい?」

アマゾナがため息をつく。いやいや……バレるも何も野菜が出てこないのだから一目瞭然だと思うのだけど?

「実は……モグラ被害で野菜が全く取れなくなってしまったんだよ。どうも噂によると巨大化したモグラが無数のモグラを引き連れて害獣被害が発生しているんだよ……」

私達3人は顔を見合わせた。

ひょっとしてこの話の流れはまたしても――?