「お、お父様……? 本当に貴方が私のお父様なのですか……?」

ミラージュは声を震わせながら、少年…もとい、父親に尋ねる。

「そうだよ。ミラージュ。私がお前の父親のセネカだ。それにしても大きくなったな。しかもこんなに綺麗になって……母親によく似ている」

小さな少年が大人びた口を利く様は不自然極まりない。本来であればここで20年ぶりの親子の対面となるのだろうが、これではまるで生き別れになった姉と弟の感動的な再会シーンにしか見れない。

すると案の定、耳元でナージャさんが囁く。

「レベッカさん。親子の対面というよりは姉と弟の対面に見えると思いませんか?」

「そうですね、私もそう思っていました」

すると……。

「イヤアアアッ! お、お、お母様は……こんな子供と……〇〇〇や×××(自主規制)な事を~っ!! 犯罪だわっ! これは立派な犯罪ですわ~っ!!」

ミラージュは左右の頬に両手を当てて叫んだ。

「きゃあああっ! ミラージュが壊れたわっ!」

「ミラージュさんっ! そんな卑猥な発言してはいけませんっ!」

「落ち着きなさい! ミラージュッ! しかもそんな言葉を年頃の娘が使うものではない!」

天使のように愛らしいミラージュのお父さん? は小さな頬を真っ赤に染めてパニックを起こしている娘? を宥めている。

一方、1人落ち着いているのは長老様だ。

「あ~今日も下界のお茶は美味いのう……」

呑気にお茶を飲んでおられる。

「と、とにかく落ち着きなさい。ミラージュ」

ひとしきり泣き叫んで、ようやく落ち着きを取り戻したミラージュに声をかけるお父さん。

「もともとは私は大人の身体をしていたのだよ? 何しろ、こう見えても520歳なのだから」

「「「520歳っ!?」」」

私とミラージュ、そしてナージャさんの声がハモる。

「あ、ちなみに私は1350歳だ」

お茶をズズズと飲む長老様。

「な、なら……100歩譲って、貴方が本物のお父様だとして……」

ミラージュが肩で息をしながら自分の父を見つめる。

「だから、本当の父親だと言っているのに……」

ミラージュパパは口をとがらせる。

うっ! か、可愛い! 頭をなでなでしたいっ!

「で、では何故そんな子供の姿に変わってしまったのですかっ!?」

ミラージュの興奮が止まらない。

「ああ、それは私のせいだな」


すると今までお茶を飲んでいた長老様が爆弾発言をした。

「「「はぁっ!?」」」

またしてもハモる私たち。

「私がセネカの力を奪ったから、子供の姿に戻ってしまったのじゃよ」

「な、何ですってっ!!」

ミラージュはずかずかと長老様の元へ行くと、胸ぐらをつかんでガクガク揺さぶる。


「なんでっ! お父様を! あんな子供の姿に! してしまったのですかっ!?」

「お、落ち着けっ! 我が孫よ……」

長老様はミラージュにガクガク揺さぶらている。

「キャアッ! やめて頂戴、ミラージュッ! 相手は1350歳のおじいちゃんなのよっ!」

必死でミラージュを制止する私。

「わ、分かりましたわ……他ならぬレベッカ様の……お願いですからね……」

そしてミラージュはパッと長老様から手を離すと、今度は腰を両手にあてて椅子に座ったままの長老様を見下ろした。

「さぁ……おじい様。何故お父様をあのような姿に変えてしまったのか理由を説明していただきましょうか?」

そしてジロリと睨みつけた――