ダンボールの中にはざっくばらんに本が入っていて、しかもこれはいつからこのままだったんだろうってぐらいこっちも埃被ってる。仕方ないのでパッパッと誇りを払って言われた通りに並べていった。

「なぁ西山」

「はい」

「俺の授業つまんない?いっつも寝てるよな」

「そんなことないですよ、英語は好きですから」

キリッと眉を上げて背筋を伸ばす、これは寝てはいるけど本心はこちらですってアピールも込めて。

「じゃあ寝るなよ、毎回寝てるだろ」

目を細めた崎本先生がこっちを見た、軽く睨むみたいに。でも今のは全然圧力を感じなかった。

「崎本生の声が素敵過ぎるんです」

「それさぁ、授業ん時も言ってたけどさそう言うなら起きてろっていうの」

「崎本先生の先生の英文を読む声はとても綺麗で透き通っていて、すごく心地よく眠りにつけるんです」

「俺は子守歌歌ってるつもりねーぞ」

全部全部、本当にそうなんだ。

ずっと聞いていたいぐらい素敵な声だから、だって今も…


話し方は変わっても声は変わらない。


本棚の端と端、本を並べるたびに近付いていく。

あの声が近くなっていく、もっと近くで…