虚しさが押し寄せる。今までのことすべてが消えていくみたいに。

「じゃぁご褒美ちょーだい♡」

「なんだよご褒美って」

「えー、わかってるくせに!いつものだよ、崎本せーんせっ♡」

その言葉が気になって、ゆっくり覗き込んだ。気付かれないように気を付けて、少しだけ顔を出す。

「…亜由はしょうがねぇなぁ」

その瞬間、崎本先生が亜由ちゃんに近付いて…



キスを交わした。



胸に突き刺さる。


胸が痛い。


胸が苦しい。



胸が…っ



逃げるように走り出した。

全速力で声を殺して走り抜ける。


なによそれ、何なのよ…


期待してしまったわ、私ったら。


今までと変わらない生活でよかったのに、少し希望を持ってしまったのね。

変わろうと思ってしまったの。

あのままでよかったのにね。


ほらね、やっぱり友達なんていらなかったのよ。