「ん、美味い」

「本当ですか」

「おぅ、何だコレ?カリカリして美味いな」

「それはクルミです!アクセントに入れました!」

二口目も三口目も運ばれていくマフィンに顔が緩んで、ずっとドキドキが止まらなかった。


“手作りお菓子をあげるっていうのはマストじゃない?”


崎本先生は知っていますか?

そんなことが言われてるんですって。


崎本先生は気付いてますか?

そのマフィンにどんな気持ちが入ってるのか…



気付いてますか?


私、もう抑えきれないかもしれません。



腕を引いて引っ張って、そのまま胸の中に…

そんなことばかり夢に見て。


だって崎本先生は力には自信があるって言うから。


「美味かったサンキュ」

このまま抱きしめてくれたらいいのに。

「家庭科の実習でこんなビニール袋まで用意してんのか」

「ラッピングって言ってください」

「ラッピング」

ピンクのリボンに合うように、透明の袋に白色の文字やイラストが描かれてる。きっとこれがいいって選んで来たんだ。

「亜由ちゃんにもらったんです」

「へぇ、亜由ちゃんに…よかったな」

メガネの奥、瞳が微笑む。

私しか映っていなくて嬉しくなる。

「はい!」

目を閉じるのがもったいないくらいに。