授業の終わった放課、教室には戻らないでちょっとだけ遠回りをする。行き先はあの資料室、きっとそこに行けば会えると思って。

「崎本先生っ」

約束なんかしていない、でもここに行けば会えるの。

会いたい時、いつも崎本先生はここにいるから。


たぶんね、崎本先生も同じだと思うの。


「西山、お疲れ」

中に入ったらすぐにドアを閉めて、誰にも見られない先生と私だけの空間にして。

「あの…これ作ったんです」

さっき出来たばかりのまだ温かいマフィン、そぉっと前に差し出した。

「ん、なんだ…あぁ家庭科の?」

「そう、です…作ったので」

ドキドキ、急に心臓の音が加速する。

うわ、すごい。

なんでかしら、緊張で手が震えちゃう。

「食べてください…っ」

しゅるしゅる~っとピンクのリボンがほどかれていく、それだけでドキドキは増してなんだか落ち着かなくて。

袋から取り出されたマフィンが崎本先生の口に運ばれていく、見入ってしまうそのマフィンをその口を。

ペロッと舌を出して、私の方がごくりと息を飲んでしまった。