「その言い方、架純ちゃんもいるんだねそんな相手!」

芝ちゃんがパァッと目を大きくして私を見た。それは少し恥ずかしかった、ドキッと変な汗が出そうになる。

「そっかー、架純ちゃんにもそんな人いるのか~」

白っぽくふわふわになった生地に芝ちゃんが溶き卵を流し込んだ。卵は3回に分けて少しずつ入れてその都度よく混ぜるのよね。

「芝ちゃんも作ればいいのに好きな人!」

「欲しいと思って作るものじゃないから」

「いたら楽しいのに♡」

「そう言われてもね」

るんるんに話す亜由ちゃんとは対照的に落ち着いて話す芝ちゃんはさくさくと手を動かしていた。次に使うカップを並べて、おかげでテキパキとマフィン作りは進んだ。

工程が進めば進むほど家庭科室は甘い香りに包まれて食欲が沸いて来た。
これはなかなかおいしそうね、いいマフィンが出来たわ。