分厚くて重いこの本も、埃っぽいこの本棚も、薄暗くて一切光のないこの部屋も、なんだか居心地がよくなってしまって。

本が読みたくなったらここへやって来た。


資料室を開けてくださいって言うと、ここは遊び場じゃないんだよって言いながら崎本先生が鍵を開けてくれてドアを閉めた瞬間ドキドキと胸が高鳴るの。


静かな2人しかいないこの空間で、崎本先生の声は私だけのものになったみたいに耳を刺激する。

近付いて来るたびに胸が締め付けられて振り返るのに躊躇してしまう。


だって振り返ったら…


もう崎本先生しか映らないから。

見えなくなるから。


唇の感触を思い出してしまうから。



求めてしまうの、目を閉じて何度でも。



世界が変わったみたいに輝いてる。

きっと世界が変わったんだ。

世界は変えられるから。



崎本先生が私を見付けてくれたから。