「崎本先生…!」

お弁当を食べ終わってすぐに教室から飛び出た、このはやる気持ちを早く伝えたくて。

「西山さん、どうしましたか?」

階段の下、上がって来る崎本先生はいつもと変わらない英語の先生だった。にこっと笑って2階から顔を出す私を見上げた。

「先生、私人生で初めて友達ができるかもしれません!」

どうしても聞いてほしくて。

「先生の言った通りでした!一言で変わる世界ってあるんですね!」

メガネの奥の瞳が、ほんのり柔らかくて。

にこっと私に微笑みかけるから。

「よかったですね」

私も笑いたくなってしまうんだ。

「はい!」

柄にもない明るい返事までしちゃって。

「あ、じゃあっ…移動教室であのっ、友達待たせてるんでっ」

「どうぞ早く行ってください、授業に遅刻したらよくないですからね」

照れ臭くてしどろもどろする私に崎本先生がくすくす笑う、それが少し恥ずかしかったけど。

「西山さん」

でも先生の瞳に映る私は嫌いじゃない。

「授業中、寝ないようにしてくださいね」


なぜか先生に見られるとドキドキするから。


思い出すの、唇の感触を。

忘れられないの。


ねぇ先生、あれは何の魔法ですか?