「…“先生”らしい答えですね」

「まぁ先生だからな、俺は」

どうしてかそう言われて寂しく感じてしまった。

それで全然いいのに、それで合ってるのに、私は何を期待していたんだろう。

「例えば西山と俺がクラスメイトだったら、答えも変わって来たかもしれないしな」

「…どう変わるんですか?それは」

別に期待なんかしていない。それなりに収まる答えを提示されるだけ、それが1番いいんだから。

「恋に落ちる、可能性もあるだろ?」

「……。」

は?何それ。

相変わらずははっと笑って、全然意味がわからない。

間違いなく適当に答えただけ、というか無理矢理にでも引っ張るだって適当な答えね。

カチャッとメガネをかけ直して微笑んで、どこか満足げで少し気にくわない感じもするけれど。

そのメガネの奥には何を隠してるんだろう。ちっとも読めない。

「どう?授業受ける気になった?」

「なりません、納得できる答えではありませんでした」

ふいっと崎本先生から目線を外して前を向いた。

私が聞いたのが間違いだったわ、誰も私の欲しい答えなんかくれないのよ。


だって私と崎本先生が恋に落ちるだなんて、そんなの絶対ありえなー… 



むにゅ



柔らかいものが触れた、私の唇に。


目を開けていたはずなのに真っ暗になったみたいな。

ううん、近過ぎて見えなかったの。



崎本先生の顔が見えないくらい近くて。