わたし、マルガレーテ・ハインツェルは、聖魔法を学ぶべく、コーフェルト聖国に国費留学していた。

 国費留学であるため、誰でも留学の対象者として選ばれるわけではない。

 そもそも聖魔法は非常に扱いが難しく、習得できる人間はひと握りと言われていた。

 そのため、逆に言えば、聖魔法の才能があると判断された者を国は積極的に、大陸で一番聖魔法について学ぶ環境が整っていると言われているコーフェルト聖国に留学させていて、優れた聖魔法の使い手を増やそうとしている。

 わたしは十年前に、聖魔法騎士団の、当時最年少の十九歳で団長職に就いたフリードリヒ・シュベンクフェルト様を見てから、彼に憧れて聖魔法騎士団への入団を目標に頑張ってきた。

 通常の騎士団と違い、聖魔法騎士団は災害時の救援活動やサポートなどを主に行っている。

 というのも、聖魔法は、傷や病を癒したり、身体強化をしたりする力なのだ。他にも薬草の成分を抽出、調合して薬を作ったりもする。そのため、通常の騎士のように剣や魔法で魔物討伐をしたり戦ったりはしないのだ。

 フリードリヒ様に憧れたわたしは、聖魔法騎士団に入るべく、八歳の頃からせっせと聖魔法の勉強と訓練を始めた。

 その努力の甲(か)斐(い)甲斐もあってか、国費留学者を決める試験に見事合格し、晴れて、十七歳の時にコーフェルト聖国に留学したのである。

 ……それがまさか、帰ったらこんなことになっているなんて。