わたしはびっくりして顔を上げた。

「そ、そうですが……」

 なぜわたしの名前がわかったのだろうと怪訝に思ってがっている と、郵便屋さんがホッと息を吐き出した。

「よかった! いやあ、こんな意味のわからない配達を頼まれたのは初めてですよ。今日の午後に赤い髪に茶色の瞳の、十八歳のかわいい貴族っぽい女の子がこの駅にいるはずだから手紙を届けてねなんて、いくら赤い髪が珍しくても、さすがにひどいですよねえ?」

 郵便屋さんはそんな愚痴を言いながらわたしに一通の手紙を差し出した。

 そんな妙な郵便配達の頼み方をする迷惑な人間はどこの誰だと手紙をひっくり返して差出人を確かめたわたしは、一気に脱力しそうになる。

 ……お父様ああああああああ!!

 手紙の差出人には、しっかりと父の「ヘンリック・ハインツェル」の名が記されていた。